こんにちわ^^
大野純子です。
カウンセリングで出会うのは、その人だけの物語です。
ナミさんの物語
ナミさんは、パートをしながら夫と二人のまだ小さいお子さんとの4人家族です。
ナミさんは、お子さんの保育園を通してママ友ができました。仲も良く、大好きなママ友です。
けれど、保育園の集まりなどで、そのママ友が他のお母さんと仲良く話している姿をみると、胸が締め付けられるような苦しさを感じていました。
すごく気にしているのに、気にしていない素振りを見せていたのです。
『気にしなくてもいい。』
そう思おうとしても、自分に言い聞かせても、心の中は、惨めな気持ちでいっぱいになりました。
嫉妬のような感情をもってしまうと共に、そのママ友と同じように周りと打ち解けることのできない自分をひどく責めました。
『私は普通じゃない』
『自分は受け入れてもらえる人間じゃない。
だから、「うんうん」となんでも言うことを聞ける自分じゃないといけない。
困ったら、ニコニコしておけばいい。自分はいつも仮面を被っている。
平気なふりをしている。
本当は、私一人だけかもって、怖くて仕方ない。
でも、かわいそうと思われちゃいけない・・・・』
ナミさんは、自分に対してそう感じていたのです。
自己否定感と共に、怯える気持ちでいっぱいでした。
ママ友が、他の人と仲良く話していた。
ただ、それだけの場面のはずなのに、ナミさんはいつの間にか、自分を責め立てていたのです。
無意識にです。
今起こっている出来事につながる過去の出来事
ナミさんは、ママ友との出来事で感じた惨めな気持ちを、以前にも受け取っていたことを思い出しました。
それは、小学6年生の時のことでした。
学活の時間。
修学旅行に向けて、班決めをすることになったのです。
3人一組が決まったら、黒板に書くよう先生が言いました。
みんなが楽しそうに、グループを作り始めました。
けれど、6年生のナミちゃんは、血の気が引いたのです。
『私には、友達がいない・・・
一緒にグループになってくれる子がいない・・・・』
ナミちゃんは、席を立つことも、周りを見ることができませんでした。
ただ、じっと座って、ボーーっと黒板を眺めていました。
怖くて、周りを見ることもできなかったのです。
みんなが書き終わると、先生が言いました。
「まだ、書けてない子はいるか?」
ナミちゃんは答えました。
「書けてません・・・。」
そうすると、先生はまだ2人しかグループになっていないところに、
「入れてやってくれ。」
と言って、黒板にナミちゃんの名前の書き足しました。
この時、
6年生のナミちゃんは<惨め>な気持ちを味わいました。
クラスのみんなから、
冷たい目で見られているような感覚になりました。
友達もいないかわいそうな子。
変な子。
ヤバいやつ。
そう思われているんじゃないかと怖くて仕方なかった。
みんなのように、友達を作ることができない・・・
友達は作らないといけない。
友達がいないと困る。
『私には、友達はいない。』
友達がいないような自分は、学校に行けない。
だから、友達がいないような惨めでかわいそうな自分は絶対悟られてはいけない。
絶対に・・・
本当は悲しかった。怖かった。恥ずかしかった。
誰ともグループを作れなかった時、ナミさんは、涙が出そうでした。
けれど、決してそんなことバレてはいけない。
だから、
グッと涙をこらえて、平気なふりをしたのです。
認めてしまったら、学校に行けなくなってしまうと思っていたから、感情を押し殺したのです。
ナミさんは、学校が大好きでした。
大切な自分の居場所でした。
勉強は好きではなかったけれど、一輪車や縄跳び、ゴム跳び。
体を動かす遊びが大好きでした。
みんなよりも極めることで、認めてもらえるのも嬉しかったのです。
特定の友達と遊ぶより、<遊びたい遊びの中にいる子と遊ぶ>ことを楽しんできました。
けれど、修学旅行のグループを決める中で、
特定の誰かを選ぶこと。
特別な誰かがいること。
誰かの特別になることを求められた時、
友達がいない自分は『誰の特別でもない存在』であることを、ナミさんは実感してしまいました。
学校の中での、自分の存在感を否定してしまったのです。
『自分はおかしい』
そう、自分自身を否定してしまったのです。
まだ、たった12歳の女の子にとって、
生きていく場所は、家庭か学校しかありません。
とっても狭い世界で生きていて、それが全てです。
そんな小さな女の子にとって、
『自分の居場所はない。』
と感じることはどれだけの恐怖だったか。
どれほどの、絶望感だったか。
だから、認めるわけにはいかなかったのです。
大人になれば分かります。
『惨めでかわいそうな自分は学校に行く価値がない』
『私は必要のない存在だ』
なんて考えは、極端で間違った思い込みです。
本当は、誰も、ナミちゃんのことを責めなかったし、笑わなかった。
グループに入れてくれた女の子たちも嫌がったりしなかった。
完全なる勘違いです。
けれど、まだたった12歳だったナミちゃんは、<そうである>と信じてしまったのです。
だから、自分の感情にフタをしました。
我慢をしました。
自分の感情に禁止をかけたのです。
小さなナミちゃんは、
修学旅行のグループの班長を自分から引き受けました。
自分の居場所を失わないように、なんとかつなぎとめておかなくちゃ。
そう思って、引き受けたのです。
修学旅行の間も、他の二人の邪魔をしませんでした。
修学旅行はちっとも楽しくなかった。
疎外感を感じました。
そして、この出来事のことも、感じた思いも、ナミちゃんは誰にも伝えることはありませんでした。
自分の中に封印したのです。
子供の頃の自分に会いにいく。そして許す。
ナミさんは、目を閉じて、あの日の教室の情景を、ありありと思い浮かべます。
教室で、恥ずかしさと、悲しみと、恐怖を一人でぐっと耐えている12歳のナミちゃんのところに、大人になった今のナミさんが会いに行きます。
トントンと、優しく肩をたたくと、ナミちゃんがハッとした顔で振り返ります。
今にも泣き出しそうな表情です。
大人のナミさんは、
小さなナミちゃんに伝えます。
「怖かったね。
悲しかったね。
恥ずかしかったね。
それでも、よく、耐えたね。」
そして、優しく、しっかりと抱きしめました。
ナミさんの頬を、涙が伝います。
ナミさんに
「小学6年生のナミちゃんは、今のナミさんが会いにきてくれてどんな顔をしていますか?」
と聞くと、
「ポロポロ泣き出しました。安心した顔をしています。」
ナミさんの表情が和らいで、笑みがこぼれました。
小さなナミちゃんへの愛おしさで、胸が温かくなりました。
誰にも言えなかった、誰もわかってくれなかった。
けれど今、大人になった自分が、誰よりも自分を理解してくれる人としてやってきてくれたのです。
そして、友達がいない自分のことも、平気なふりをした自分のことも、責めずに抱きしめてくれる。
「あなたは、何も悪くないよ。」と、頭を撫でてくれる。
ナミさんの中に、12歳のナミちゃんはまだ、生きていました。
その時に受け取った価値観をもとに、今まで生きてきたのです。
けれど、30年の時を経て、自分を許してくれる人がきてくれました。
誰よりも、自分が自分を許していなかったのです。
子どもの頃の自分に、今の自分が会いにいく。
これは、イメージです。
たかがイメージ。されどイメージ。
このイメージの中で、自分を許し、愛おしい自分をしっかりと体感するのです。
このイメージと、体感は絶大なのです。
自分の世界が変わります。
脳は、今起こっている出来事の感情を決めるときに、記憶の蓄積を司る側頭葉を介して感情を決定します。
要するに、無意識に、過去に起こった出来事と照合して、今の感情を決定しているのです。
そして、少し厄介なのが、過去に起こった出来事は、自分の解釈を通して記憶されるということです。
ナミさんも、学活の時間に起こった出来事を、自分で解釈して、自分の中だけの事実を作り上げていきました。
そして、「友達がいない私は、おかしい人間だ。」と、自分で決めてしまったのです。
これが、ナミさんの価値観、信念になっていきます。
どんなに違った信念でも、人はその信念を証明しようとする心理システムを持っています。
『あなたには友達がいない』
『友達がいないあなたは、おかしい』
『友達がいないあなたは、かわいそう』
『かわいそうな人に見られると恥ずかしくて生きていけない』
ずっと、そう自分に言い続けて、責め続けて生きてきたのです。
子どもの頃に受け取った考え方(価値観)が今もなお、潜在意識の中にあって、ママ友の交友関係を「気にしなくてもいい」といくら顕在意識で思おうとしても、到底できなかったのです。
そして、さらに自分を責めてしまいました。
けれど、これは明らかな事実誤認です。
ナミちゃんは、友達がいなかったのでも、おかしかったのでも、かわいそうでも、恥ずかしくもなく、決して、生きていけないことなんてなかったのです。
この、事実誤認に自分自身が気づくことが、何より大切です。
そして、自分のことを許せると、現実が変化し始めます。
思い出を書き換える
記憶が事実誤認だと分かったら、今度は、本当は欲しかった記憶に上書きをします。
妄想タイムです。
12歳のナミちゃんは、友達がいなかったのではなく、遊びに合わせて、その時々で一番楽しめる子と、一緒に過ごすことが得意だったのです。
ただ、特定の誰かとつるんでいなかっただけなのです。
誰とでも、楽しめる力を持っていたのです。
学活の、あの時間。
先生がグループを作るよう話すと、ナミちゃんは考えました。
<修学旅行は誰と一緒に行けたら、私は最高に楽しめるだろう!!>
一緒に行きたい女の子のところに行って、ナミちゃんは声をかけました。
「あなたと一緒に修学旅行に行ったら絶対に楽しいって思ったの。仲間に入れてーーー!!」
そうすると、相手の女の子は、嬉しそうに笑っって、「私もナミちゃんと同じグループがよかったの!嬉しい〜〜〜!」
と、手を取り合ってピョンピョン飛び跳ねるのです。
そして、ナミちゃんはその子と一緒に、黒板に名前を書きました。
修学旅行に行くことを考えると、ワクワクしてたまりません。
妄想しているナミさんに、笑みがこぼれます。
これから、もし修学旅行のことを思い出したとしても、この新しい記憶がセットです。
記憶は、改ざんできます。
イメージは人生を変化させます。
無条件の愛のメッセージを自分へ
ナミさんは、思い込みを握って、苦しんでいた<小さな私>に無条件の愛のメッセージを送ります。
『あなたは一人じゃないよ。私がいるよ。
何があっても、私はあなたを絶対に見捨てないよ。
例え、友達がいなくても。
普通じゃなくても。
平気なふりをしてしまったとしても。
強がったとしても、そんなあなたも、大好きよ!!!』
どんな自分であったとしても、見捨てず、見守り、愛してくれるお母さんを自分の中に持つのです。
アファメーションで新しい真実を握る
ナミさんの苦しみは、子どもの頃から、悲しみや、恐れ、怯えや、恥ずかしいという感情を表現できずに我慢してしまったことでした。
表現したら、『生きていけない』と、思ってしまったのです。
それは、ありのままの私は受け入れてもらえないという、自分自身への無価値感でした。
アファメーションとは、肯定的な自分への宣言で、おまじない言葉です。
思考は言葉でできています。
言葉を変えていくことで、
思考を変化させていくのです。
ナミさんは、こんなアファメーションを作りました。
『私は、自分の気持ちを何よりも大切にして、どんどん安心で満たされていきます♡』
これまでのナミさんは、
自分の気持ちに目を向けることを禁止していました。
けれど、これからは感じたことに<OK>を出せば出すほど、安心感で自分が満たされていくのです。
あなたが欲しかったのは、どんな世界?
事の発端に戻ります。
ナミさんは、仲のいいママ友が他の人と仲良くする姿に悩んでいました。
残念ながら、他人を変えることはできません。
ママ友はこれからも、自分の交友関係をどんどん広げて、ナミさん以外の誰かとも仲良くなっていくでしょう。
それでも、ナミさんが欲しい世界。
自分がどう在りたいか。
それは、
『ママ友が誰かと話していても気に留めない世界』でした。
そのためにどんな行動をとる?
この世界を作り出すのはナミさん自身です。
また同じような場面に遭遇したら、また心が痛むかもしれません。
以前は、そんな自分を責めて、自分の感情を見ないようにしていました。
けれど、これからは自分の湧いて出た気持ちを最優先に寄り添ってあげるのです。
ママ友が他の人と楽しそうにしている姿を見て、もし、悲しい気持ちが湧いたのなら、
「あぁ、悲しい気持ちだね。」と自分に寄り添ってあげます。
私も仲良くしなくっちゃ・・・
でも、拒絶されたらどうしようって、怖くなったら、「受け入れてもらえなかったらと思うと、怖いよね。」って、自分に寄り添います。
もし、嫉妬心が湧いたなら、「私だけを見ていて欲しいって思うよね。私を大事にして欲しいって思うよね〜〜。」と、自分に声をかけてあげてもいいかもしれません。
その感情や考えに、いいも悪いもありません。
その感情や考えを、無視しないで。
そう思った自分を許可するのです。
自分を許すことは、自分にしかできません。
自分に寄り添うと、すごくいいことが起こります。
人間関係が変わります。
そして、自分に質問してあげてください。
『それで、どうしたいの?』
見たくないと感じたなら、その場から立ち去るのも一つの方法です。
逃げるって、悪いことではありません。
自分を守る大切な手段です。
もし、「あぁ、私も話してみたいな。」と、感じられたなら、声をかけに行ってみる。
前もって、どんな言葉で、輪の中に入っていくかイメトレしておくといいです。
今までのパターンを壊すには、今までとは違う行動を起こす必要があります。
それは、少し怖いかもしれません。
けれど、実験のつもりで一歩進んでみるのです。
行動に起こすことで、自分の本当の望みを、自分が叶えてあげるのです。
自分への信頼を深めていくのです。
そして、
アファメーションを唱えたり、書き出して、私はすでにそうである!って自分自身に伝えていくのです。
『私は、自分の気持ちを何よりも大切にして、どんどん安心で満たされていきます♡』
安心は、生きる源です。
自分でしか作り出せません。
ナミさんはこれから、自分で自分のことを、どんどん安心させてあげて、幸せを実感していく力を持っています。
自己解決力がついていく。
これこそが、私がセラピーをする喜びです。
みんな、それぞれに生きる大変さってあります。
けれど、自己解決力さえあれば、悩みも、苦労も豊かさに変えていけます。
その力を、一緒に育んでいきましょう^^